2017年10月18日
近年、亡くなった方名義の不動産の名義変更(相続登記)がされていないケースが問題となって来ている。法務局の調査では、最後に所有権の登記がされてから、50年以上経過しているものが大都市地域において6.6%。中小都市や中山間地域において26.6%にもなることが分かった。
特に、都市部においては、相続人が多数存在する不動産も多く存在すると見られ、所有権者の特定が困難となり、まちづくりや公共事業に悪影響を及ぼしている状況がある。こうした状況の中で、法務省は相続手続き(相続登記)されずに所有者がわからなくなっている土地の本格調査に初めて乗り出すとのこと。具体的には、公共事業や都市開発の妨げとなっている不動産について、司法書士らに委託して、不動産の登記簿謄本や戸籍謄本などから、所有者や法定相続人を確認し、相続手続き(相続登記)を促すとのこと。これに関連して法務省は、一連の取り組みを進めるための予算として約24億円を30年度の当初予算の概算要求に盛り込む。
相続登記を「いつまでに」するのか、期限を決めて罰則規定を作る方が良いのか、それとも一定期限内に相続手続き(相続登記)をすることで登録免許税を安くするのか、明確なルールづくりが求められている。
2017年07月14日
2017年6月、杉原千畝の妻である杉原幸子が作成した遺言書の有効性を争った判決が東京高裁で下された。
杉原幸子は遺言書を2つ作成しており、2001年4月に作成された第一遺言書では「次男に遺産を相続させる」旨が書かれていた。その後、2001年12月に作成された第二遺言書では「長男の妻を遺言執行人に定め、遺産は長男の子2人に相続させる」旨が書かれていた。
遺言書はルールに則って、正しく書かれていれば「後から作成されたもの」が適用される。
しかし、第二遺言書を作成した2001年12月当時の杉原幸子氏は体調不良によりせん妄症状(意識障害・幻想・幻聴)がでることもあり、入院中であった。尚且つ、第二遺言書は長男の妻が杉原幸子氏を誘導して作成されたものである、と四男が遺言書無効の訴えを起こした。
争点は杉原幸子氏の意思判断能力となり、第一審で東京地裁は「無効」との判断を下した。しかし高裁では、医学的根拠が乏しいことや、2001年12月以降の杉原幸子氏の講演活動の実績から「判断能力があった」とみなし、「第二遺言書は有効」という判決がでた。
◆杉原千畝とは
第二次世界大戦中にリトアニア領事代理だった杉原千畝は、カウナス日本領事館へ唯一の逃げ道をもとめて押しかけたユダヤ人に対して、日本政府の意見に背きビザを発行した。発行したビザは「命のビザ」と呼ばれ、およそ6000人のユダヤ人を救ったと言われている。
杉原千畝はこの功績からイスラエル政府から日本人で唯一「諸国民の中の正義の人」の称号を授与され、「東洋のシンドラー」「日本のシンドラー」と呼ばれている。
2017年05月19日
「法務省は5月、結婚20年以上の夫婦のどちらかが亡くなった場合、住宅を贈与された配偶者を遺産分与で優遇する方向で検討しているという。長年付き添ってきた夫婦にとっては良い方向に進みそうだ。」
上記のニュースが5月頭に発表された。相続法について見直しを進めている法務相では、長年連れ添った夫婦のどちらかが亡くなった場合に、住居としていた自宅を贈与された配偶者を遺産分割の際に優遇するとの改正案を来年の国会に提出する方向で検討している。条件として、結婚20年以上で、生前あるいは遺言にて住居について贈与をされた場合が対象となる。
この改正により、高齢者が遺産分割協議において住居を失ってしまう恐れがあることについて、生活の安定を図ることを目的としている。
2017年03月22日
相続税や贈与税などの国税が、今年1月4日からクレジットカードでの支払いが可能になった。「国税クレジットお支払いサイト(トヨタファイナンス株式会社が運営)」から納付情報やクレジットカード情報を入力することで、金融機関の窓口などに出向かなくても国税を納付することができるそうだ。
カード払いが可能な国税一覧
- 申告所得税及復興特別所得税
- 消費税及地方消費税
- 法人税
- 法人税(連結納税)
- 地方法人税
- 地方法人税(連結納税)
- 相続税
- 贈与税
- 源泉所得税及復興特別所得税(告知分)
- 源泉所得税(告知分)
- 申告所得税
- 復興特別法人税
- 復興特別法人税(連結納税)
- 消費税
- 酒税
- たばこ税
- たばこ税及たばこ特別税
- 石油税
- 石油石炭税
- 電源開発促進税
- 揮発油税及地方道路税
- 揮発油税及地方揮発油税
- 石油ガス税
- 航空機燃料税
- 登録免許税(告知分)
- 自動車重量税(告知分)
- 印紙税
利便性がかなり高くなる上に、ポイントも溜まる。さらに国税をカードで支払う際は「一括払い」だけではなく分割払いやリボ払いを選択することも可能だ。(ボーナス払いは不可)。
ただし、領収書が発行されない点と、クレジットカードの利用手数料は支払者負担になっている点は充分注意が必要だ。
2017年02月21日
死後離婚という言葉を聞いたことはあるだろうか。死んだ後の離婚と言われてもピンと来ない方も多いはずだ。
正確にいうと死後離婚と呼ばれる制度はないが、姻族関係終了届という書類を配偶者の死亡後に自身の本籍地あるいは住所地の役所で提出することで、死亡した配偶者の血族との姻族関係を解消することができるものだ。
姻族関係終了届は、あくまで配偶者の姻族との関係を終了させるものであるため、死亡した配偶者の遺産を夫あるいは妻として相続することは可能である。さらに死亡した配偶者との間に子どもがいる場合、姻族関係終了届を提出しても、その子どもと配偶者の血族が直系血族であることに変わりはない為配偶者の両親等が亡くなった場合は子どもが代襲相続をすることが可能である。
その他、遺族年金の受給もでき、婚姻後の名字はそのまま使用することができる(旧姓に戻したい場合は、別途手続きが必要)死亡した配偶者の両親・兄弟の扶養義務も無くなり、長年配偶者の親族関係で悩んでいた方にとってメリットは多い。
姻族関係終了届は本人の意思のみで提出することができ、姻族の同意も必要ない。姻族関係終了届の提出数は年々増加傾向にあり、死後離婚は徐々に世の中へ浸透しつつある。
死後離婚をすることで、姻族との関係の悪化は避けられない道であるため、「夫と同じお墓に入りたい」等の希望があったり、子どもがいる方は子どもと亡くなった配偶者の血族の関係を悪化させてしまうことがないように、慎重に検討する必要がある。
2017年01月13日
遺言書によって遺産を渡すことを遺贈という。遺贈は相続人に限らず、相続人以外の個人や団体に遺産を渡すことができる。2016年5月、「川崎病」とよばれる病の研究支援をしている「NPO法人 日本川崎病研究センター」へ遺贈による寄付があったことがわかった。
川崎病とは公害ではなく、川崎医師が発見した病である。原因はまだ明らかになっておらず、症状は発熱や発疹、目の充血等がある乳幼児が中心にかかる病だ。患者数は年々増加傾向にあり、残念ながら治療法も予防薬も現時点ではない。
遺贈をした横須賀の女性は、2011年に川崎病を研究する記事を新聞をみて自身の遺産を寄付しようと考え、公正証書遺言を作成した。そして2015年1月に女性が亡くなり、遺産総額およそ1億7千万円が寄付された。これまでにも、1億の遺贈が複数回あったが、横須賀の女性が遺贈した1億7千万円は遺言による寄付の最高額だった。
川崎病を患っている方の家族や研究者たちにとって、嬉しいニュースだったに違いない。
2016年12月14日
2017年税制改正で相続税に関する改正内容が一際、注目を浴びている。現行では相続によって財産をあげる人(被相続人)と貰う人(相続人)の両者が、5年以上海外に住んでおり、日本に居住を持たない場合、「海外にある資産」については日本の相続税・贈与税の制度は適用されない。これは「5年ルール」と呼ばれている。
今回話題になっているのは、この期間を10年まで延長させるという内容だ。相続税法を改正する背景には「富裕層の税金逃れ」がある。
日本では相続税・贈与税ともに最高税率は55%となっているが、オーストラリアやシンガポールは相続税がかからない。また前述の通り5年以上海外に住んでおり、日本に住んでいなければ相続税については居住国(海外)の税法が適用されるため、5年ルールを逆手にとってシンガポールなどに移住する富裕層が後を絶たない。
こうした富裕層による税金逃れを防ぐために、相続税法の改正後は居住年数を5年から10年に引き上げるようだ。2017年税制改正はタワーマンション増税なども含め、富裕層にとって悩ましい改正になっている。
2016年11月24日
代表的な相続財産には預貯金がある。実はこの預貯金、一部の例外を除き遺産分割の対象に含まれないことはご存知だろうか。
金庫などに入っている現金とは異なり、「預貯金」というのは、あくまで銀行に対する債権という性質をもっており、2004年の判例でも「遺産分割をしなくても、他の相続財産に関係なく法定相続分に応じて分割(継承)される」となっている。(※もちろん当事者同士の合意があれば、預貯金を遺産分割の対象に含めることも可能である。)
判例の見直しが期待されている今回のケースは、被相続人の預貯金およそ4000万を巡って争われている。法定相続人は2人だが、そのうち1人が被相続人の生前に5500万ほどの贈与(生前贈与)を受けていたという。生前贈与を考慮せず、被相続人の預貯金を法定相続分通り2分の1ずつ分けるのは不公平だと主張したが、一審・二審は判例通りの判決となった。しかし、最高裁へ不服を申し立てたところ、最高裁は審理を大法廷に回付した。すなわち、判例が見直される可能性があるということだ。
預貯金は遺産分割の対象に含まないという判例は、金融機関の運用や上記のように不公平が生じることから度々指摘されてきた。今回の決定には大きな注目が集まっている。早ければ年内には決定がでるそうだ。
2016年11月10日
近年、大人気のタワーマンション。なかにはジムやプール、ラウンジといったホテル顔負けの施設が備わっているマンションもある。ご存知の方も多いと思うが、タワーマンションは高層階になるほど資産としての価値は高くなる。しかしながら床面積あたりにかかる固定資産税は低層階でも高層階でも変わらない。そこで現在検討されているのが、「固定資産税を高層階になるほど増税させ、低層階になるほど減税する」という制度だ。
この制度が検討されている背景には、タワーマンションを購入することで相続税評価額を下げることを目的とし、節税対策の一環でタワーマンションを購入する富裕層がいるため問題になっていることが挙げられる。しかし、タワーマンションだけ評価方法を変えるというのは公平性に欠けることから、制度の導入はもう少し様子を見る必要がありそうだ。
2016年10月26日
「デジタル遺品」という言葉が今ひろがりつつあるようだ。事故や病気で急死した人のPCがスマホなどに残されているデジタルデータの事をデジタル遺品と言うそうだが、最近はこのデジタル遺品をめぐってのトラブルが増えているそう。
亡くなった夫のPCをのぞいてみたら、不倫の写真やメールなどが出てきた等の事態が増えているそうだ。不倫はしてはいけないが、このような秘密事は文字通り墓場まで持っていく責任が必要である。